八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.138


【掲載:2019/5/26(月)】

音楽旅歩き 第138回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

夢!そして冒険『レオナルドが夢見た機械』

 〈レオナルド・ダ・ヴィンチ〉をご存知ですか?
「モナ・リザ」や「最後の晩餐」を描いた人、ですね。
一度はどこかで観られているはずだと思いますが、どうでしょう。
私も久しぶりに彼の描いた絵画やスケッチなどを見ながら彼とその時代に思いを馳せています。
人間の歴史というものはホントにとんでもない人物をこの世に送り出すものですね。
天才と呼ばれる人は沢山いますが、このレオナルドはその中にあっても特別の天性の才能を与えられた人物です。
一般的には画家として知られていますが、この人、その他の分野(音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、工学、力学、土木工学など)においても顕著な業績を残しています。
その広さに唯々驚くばかりです。
〈レオナルド・ダ・ヴィンチ〉、フルネームは〈レオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチ〉というそうです。【ヴィンチ村】に生まれたので〈ダ・ヴィンチ〉と付いています。
好奇心が向学心へと向かい、その中のある事柄を突き詰めていくことが更に次なる好奇心へとつながり、どんどんと広がりを見せていく。人間そのものの進化、拡大していく様相が彼を追うことの中で体験できるのではないかと思われるほどです。
1505年頃に描き、そして書き、研究した『鳥の飛翔に関する手稿』という文書があるのですが、そこには今のハンググライダーやヘリコプターのような図が描かれています。
それだけでもその想像力は大したものだと言えるのですが、何とそれらが現代では実際に飛んでいます。
彼の夢、研究がその後の人々に受け継がれて実ったということですからこれは凄いことです。

 2003年、イギリスのテレビ局によって制作されたドキュメンタリー番組『レオナルドが夢見た機械』(Leonardo's Dream Machines)の中、レオナルドが描いた設計図どおりに器具を製作して実験したそうです(やりますね、イギリスのテレビ局)。
結果は動作したものもあれば、全くできなかったものもあったそうです。
そうだろうと思いますが、しかし、その着想はその後にも活かされているはずですね。
彼が生まれた年、それは1452年だと言われているのですが、その年は日本での室町時代(享徳元年)だそうです。
その時代を考えればやはり凄い!と思いますね。
今回のテーマ、いきなり感があると思われたかもしれませんが、実はこの『レオナルドが夢見た機械』を綴った詩にアメリカ合衆国の若き作曲家、エリック・ウィテカー(現在49歳)が作曲したものを近々指揮することになっています。
この曲、とても刺激的で面白いのですね。
レオナルドが夢見た世界を〈現代音楽様式〉で見事に浮き上がらせることに成功しています。
レオナルドに天の声が聞こえてきます。
「レオナルドよ、飛びなさい」と。
そして意を決して勢いよく飛翔した後に訪れる何とも楽しげなリズムと音たち。
演奏が楽しみなんですね。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ