八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.43


【掲載:2014/12/12(金曜日)】

やいま千思万想(第43回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[「人」が音楽をつくる「音楽」が人をつくる(6)]

 これまでは私の合唱団のメンバーについて、人となりを書いてきたのですが今回は私が指揮するオーケストラ、「シンフォニア・コレギウムOSAKA」(略称「SCO」)のコンサートミストレス(コンサートマスターの女性呼称)、私が「れいこちゃん」と呼ぶ森田玲子のことを書きます。
 彼女との出会いはあるオーケストラで指揮者とヴァイオリン独奏者として共演した折りで、その演奏にいたく感じたことに始まります。
しっかりした音、正確なイントネーション、説得性のあるフレーズ、そして私の棒にぴったりとついてくる音楽性。
 その頃にオーケストラ作りを考えていた私には運命的な出会いであると確信するものでした。
それまでは私が鍵盤楽器を奏し、仲間の音楽家たち数人でコンサートを開いていたのですが、合唱団も作り、いよいよ室内オーケストラへ拡充しようと望んでいた矢先のことです。
その中心となる第一ヴァイオリンのトップ奏者、つまりコンサートマスターの人選が急務だったのですが、その時に彼女に出会ったというわけです。
 彼女も私の誘いを快く引き受けてくれ、私の夢は一気に膨らみ、現実味を帯びて活動への準備の道が開かれました。彼女との幾つかの演奏会の共演を得た後、いよいよ私のオーケストラは順調なる船出となり、夢を乗せて大海原へと向かうこととなりました。

 コンサートマスター(ミストレス)の仕事は音楽作りの要(かなめ)です。
オーケストラ全体をまとめ、また私の手足となってアドバイスもし、具体的な奏法などを決め、そのための奏者の人選もしなければなりません。
このオーケストラ設立計画、音楽作りも組織作りも独自性を伴うことが必至でした。
特に、私が目指した音楽は合唱団と共に新しい音響作りを目指したものだけに、それまでのオーケストラでの慣習の奏法を変える必要があったのですね。
 それは今思い出してもワクワクする練習でした。
音の立ち上がり、メリハリのあるフレーズ、純粋なハーモニーが立ち現れ始めた初期の頃のあの緊張感と充実感は今思い出しても心躍ります!

 彼女はその船出にもっとも相応(ふさわ)しく、また頼もしい存在、相棒となったのです。
彼女の高度で確かなテクニックに裏付けられた曲へのアプローチ、そして音楽に対する探究心とエネルギッシュな行動によって、私が抱いたオーケストラ作り、理想のサウンドへと突き進んでいくことになりました。

 団員のビオラ奏者と彼女は結婚します。
私は二人を結び付けたということで結婚式では仲人役。
その後、彼女は子供3人を育て、家庭と音楽とを両立させようと猛進して行きます。
その姿をなんと形容すれば良いのか適切な言葉が見つかりません。
 バイタリティー溢れる玲子ちゃんです!
音楽界での女性の躍進は目ざましいです。
男性と対等の関係を作ることができます。
いや、理想の関係ができる筈です。
団作り、音楽作りは彼女のようなエネルギーをもった人が絶対に必要なのですね。





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