各国で歌われていましたが、特にパリのノートルダム楽派の「オルガヌム」が有名で、レオニヌス、ペロティヌスが代表的作曲家として知られています。
参考になるCDを記しておきますので、是非一度聴いてみて下さい。
1)<ゴシック期の音楽>と題したCDで「ロンドン古楽コンソート」、指揮はデイヴィッド・マンロウです。アルフィーフから出ています。
2)<ペロティヌス(ペロタン)作品集>と題したCD。ヒリヤード・アンサンブルが名演を繰り広げています。私のお薦めです。
これらを聴くと<宗教音楽(カトリック音楽)>のイメージが変わります。
いわゆる慣れ親しんだ宗教音楽を一新し、現代音楽かと思わせるものがあります。
当時、完全で理想的な分割法だと思われていた3分割のリズムは、動的で踊りのような効果をも生み出すのです。
さて、これらを歌うときの特徴です。
旋律には抑揚は付けますが、 ヴィブラートは抑えられ、音から音への移りは明確です。ポルタメントの使用(この問題は後に詳しく論じましょう)はこの時期では最も様式から遠いものと言えるでしょう。
テンポは厳格です。
リズムにはやはり西洋音楽の基本である、<弾み>があります。
<すり足>状のリズムはいくら<宗教的>だからと言っても似合いません。
上の二つのCDの演奏でもそうなのですが、対旋律を支える長く引きのばされた声を一度体験してみて下さい。
これが私には西洋における<宗教音楽>の基本と思われてなりません。
それは<パイプオルガン>の響そのものだからです。
<パイプオルガン>はもっともヨーロッパ的な楽器だと言えるでしょう。
この楽器の特徴は、音の均一性です。
音量も、音質も基本的には変えられません(ストップと呼ばれる、鳴らすパイプを変える装置を用いると変えられます)。
ディミヌエンド(だんだん弱く)、クレッシェンド(だんだん強く)もできません。(後世にはできるように改良して付け足されましたが)
ですから、西欧の宗教音楽を演奏するときは必ず<オルガン>の響を想像しなければならないわけです。
練習など、理想的には<パイプオルガン>でしたいものです。
これらは、声のイントネーション、声の維持を何よりも勝って会得する手段となるのです。
純正5度などの響はこれによって身に付きます。
よく調律されたオルガンは純正に近い響を持っていますので、声自身による純正の響づくりの良き助けとなるのです。
「中世の音楽」を一度味わって下さい。
第26回「中世音楽の演奏」終わり