八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.234


【掲載:2023/03/02(木曜日)】

やいま千思万想(第234回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

〈犠牲〉ではなく、不自由でない恵み豊かな〈生存〉を

 日本がどんどん沈んでいく。それも加速して。
暗澹(あんたん)たる気持ちで毎日が過ぎていきます。
どうしてある時代から価値観がこんなにも真逆なものになったのか。
大きく表立ったのは森友・加計問題が始まりと記憶します。
その後、文書破棄、捏造が日常的に起こり、その結果として議事録、公文書を開示しなくなり密室決定が増加。
国の政策としては解決されないでいる昇給問題。
農業政策での矛盾、外交に因る紛争解決への道を辿らず軍備拡大。
3年間のコロナ対策での混乱。
「マイナンバーカード」の押しつけとそれと共に発覚するデジタル化の発展性の無さ悪さ。
最近では、発覚した報道規制の偏向(放送法の解釈を安倍政権が変えようとしたことを示す行政文書が見つかった問題)。
原子力発電の安全対策を明示しないでの増加政策。これは世界的情勢に反する歴史的転換。
そして驚きを越えて失笑してしまう大臣発言の連発。
それに並ぶように議員や官僚の資質を疑う不正疑惑の表面化。もう出て来るわ出て来るわ!

 日本人の劣化とみるのは間違いなのでしょうか。
「嘘をついてはいけません」「人の物を盗るのはダメです」「喧嘩は止めるよう、話し合いを」等、
昔々にたたき込まれた社会での約束事など何処かに行ってしまったようです。
このコラムも毎回国の「不可思議な事柄」ばかりを書き続けるとは思いも寄りませんでした。
人間にとっての「文化」、それを音楽活動を通しての様々な出来事や想いによって綴ろうと始めたのですが、
毎日はその「文化」を脅かす事柄ばかりに思いは費やされる。
安心感の中にあって、未来への発展、創造力を見出す力。それが霧の中にかすんでいくような感覚です。

 人類は大きな岐路に立たされている。それが実感。
日本だけに留まらず(しかし歴史に逆行する特殊な事例として顕著に表れていると思われます)、
生命をも脅かす大きな時流で世界中が不安に苛(さいな)まれる日々が続いています。
どうすれば良いのでしょうね。
人は、姑息に!傲慢に!利己に!を貫く。これらに徹(てっ)すれば楽になれるのでしょうか。
どうも私は(いや、多くの私たちは)これらに徹することができない部類に入るようです。
いつも行き着くところは、「賢くなる」つまり知恵(智慧)を持ちたいという事。
多くを知ることでしょうか。想像力を持って人知を超えたいと実行することでしょうか。
救いは、安定は、その先に有ると信じることでしょうか。

 内省(ないせい)・自省(じせい)できる人間に成りたいと私は思います。
他の人を自己と同じように知りたいと思っています。
互いに協力為(し)合いたいと思います。
平和に、そして身も心も豊かにと、共に生きたいと思っています。
時間は決して止まりません。
人の命には限りがあるかもしれませんが、人間の歴史は決して止まりません。止めてはなりません。
そうであるならば未来へと繋ぐことのできる流れを創り上げなければなりません。
〈犠牲〉ではなく、不自由でない恵み豊かな〈生存〉を。 





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