八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.235


【掲載:2023/03/30(木曜日)】

やいま千思万想(第235回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

この世界で誰が「幸あれ」と祈ることができるのか?

 新幹線、以前あった景色が変わっていく。
山が削られて宅地となり、住宅が並ぶ。
山の景観を知っている者としては寂しくもあり、何かしら不安さえ覚える。
山が削られ空気の流れが変わるということは環境が変化するということ。
そうなると周辺の生活に支障が出る恐れがあるわけです。
一企業の事業ならまだしも(これとてそう簡単に対処できることではありませんが)、
もしそれが国が政策として行うとならばもう気の遠くなる事態が起こるやもしれないのです。
だからこそ住民の生活や環境について充分な説明と理解を求めるプロセスを確実に履行し、そして実行しなければならないのです。

 我々を取り巻く事項の変化は大きな戦略の中で行われています。
我が国の政策によって、我が国の利益に沿って、繁栄を目指しての戦略ではなさそうです。
世界の国々の、有力集団(企業体)の力関係が絡んで進められている。
日本は特に米国が軸となってあらゆる分野に至るまで徹頭徹尾、関係している。言い方を変えれば〈力を握られている〉。
我が国独自の外交としてではなく米国の戦略と関わり、世界の国と国との力対力の構図の一部として動かされている。と言って良いでしょう。
敵弾を撃ち落とせない迎撃ミサイル購入とその設置。
環境悪化をものともせず強行する埋立、伐採。
これらの決定に至る議論の視覚化を含めた情報開示がなににも増して優先され、実行されなくてはなりません。
「民主主義」であるかどうかを越えて当然の社会の約束でしょう。
人間が協力しあって、この地球上の生物の長の座に君臨した結果を見れば当然です。

 他紙にも書いたのですが十分な「理解」を得る説明なく事が進められていく事柄が多すぎます。
国防費の増額、被災者、被害者たちへの援助金、支援金の削減。
防衛論議や実情調査を尽くすことなく強行される。何かしら「問答無用」という言葉が浮かぶ。
何事に対しても「賛成」「反対」の意見はあるもの。しかし、強行してはダメでしょう。
理解なくして幸福をめざす政策があるとは思えない。それらの施行が成功する筈はない。

 誰かが、苦しく耐え、尊い人生でありながら、
ただただ底辺から富む人々を支える存在でしかない生き方って有ってはならない。
力に任せた「お仕着せ」はスムーズに人々の賛同を得ることはない!
理解し合えること無しには、互いに表面(おもてづら)をどう繕っても人の心を変えることはできまない。
虚しさだけが両者に残る。
その時、一体誰が得するというのでしょう。
その頂点を目指す多数の権力闘争、それを誰しもが狙い続けているというのでしょうか。

 現実を見れば、明らかに「権力者」が国を制している。
国民の、いや生きる人々の顔が見えない。
そのような世界を、人類は本当に望んだのか。
戦禍が絶えない。温暖化での災害が想像を絶する勢いで襲っている。
貧困故に暴挙を重ねる。
国も、人も、そしてこの地球に有る全てのモノに「幸あれ」と誰が祈れるのか?
しかし私は祈り続けるしかない!





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