八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.207


【掲載:2023/02/19(日)】

音楽旅歩き 第207回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

《みんなちがって、みんないい。》あるテレビドラマを観て思う

 最近評判のテレビドラマを観ています。
今年(2023年)の1月から放映。原作は漫画。そのテレビ化です。
始めは「何だろう、この題名」が気になり、そして内容に魅了されました。
石垣島で観ることができるかどうか解らないのですが、何処でも、誰にも、いつの時代でも通じる事なので書こうと思います。

 その題名は『リエゾン-こどもの診療所』。リエゾンとはフランス語で〝liaison〟、「つなぐ」「連携」を意味します。
「結びつき」とするのも良いでしょう。音楽でも用いることがあり、「連声(れんじょう)」「連結=単語と単語を結合して発する」としてよく使われます。
ドラマでは「発達障害」を持つ人々との結びつきを意味したものでしょう。
まだ数回の放映なのですが、十分な問題提起をしてくれる貴重な作品となっています。

 原作〔漫画:ヨンチャン、原作:竹村優作。講談社〈モーニングKC〉〕。
2020年6月23日発売から既に11巻(2023年1月23日現在)を数えています。
さて、心の病、闇を抱える子どもたちと向き合う「発達障害」を持つ医師。このシチュエーションだけでも興味は湧きます。
遅刻や忘れ物の常習。必ず一日に一つは失敗をするという問題行動の多い人間。
「他の人と違う」ことを自覚するも、その症状に名前が付く。「発達障害」だと。

 音楽をする者として、教える、伝える者として、この言葉は何度聞かされたことか。
そしてその言葉は、ある良くない固定観念を持ってしまう。その問題性を随分考えさせられました。 人と同じことができず、違う行動を取ってしまう。これって「病気」? それならば私など間違いなく「発達障害」と名付けられても仕方ないでしょう。
ずっと人と違うことを考え、してきたのですから。
〈言葉〉って自分自身を縛り、恐ろしい作用を起こします。ごく当たり前のこと、と識る人が多くなれば良いのに、と幼い頃から思ったものです。
童謡詩人の「金子みすゞ」が《みんなちがって、みんないい。》と『私と小鳥と鈴』という詩の最後に記します。
なんと心優しい、広がりをもつ言葉でしょう。他に傑作の詩から二つ。『大漁』と『明るい方へ』を書き出しましょう。

 《『大漁』朝焼小焼だ/大漁だ/大羽鰮(おおばいわし)の/大漁だ。浜はまつりの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰮(いわし)のとむらい/するだろう。》

 《『明るい方へ』明るい方へ/明るい方へ。一つの葉でも/陽(ひ)の洩(も)るとこへ。籔(やぶ)かげの草は。明るい方へ/明るい方へ。
翅(はね)は焦(こ)げよと/灯(ひ)のあるとこへ。夜飛ぶ虫は。明るい方へ/明るい方へ。
一分(いちぶ)もひろく/日の射(さ)すとこへ。都会(まち)に住む子等(こら)は。》

 世の「精神科」の方々は様々な病名を考えだし、付けます。私は思います。どちらが「普通」なのか?
敢えて言うならば
〈どの人も、皆「発達障害」を持つ!例え医師側の精神科医であっても〉
それを取り上げたドラマが楽しみです。





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