八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.237


【掲載:2023/04/27(木曜日)】

やいま千思万想(第237回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「シニア右派」は実は若者たちでなく50歳以上の世代⁉

 「右翼」とか「左翼」という言葉をよく聞きます。
私はあまり使ったことがなく、〈何となく〉意味もハッキリとしない言葉でした。
それに似た言葉で「保守」とか「革新」という流行りの文字。
この言葉は私もよく読み書きするもので、政治に関心を持った頃から使っています。

 最近の二度に渡る殺傷事件。一つは命が奪われ、一つは未遂に終わった犯行。
マスコミはその事を追求する姿勢も見せていない扱い方。
もっと報じるべきという者、扱わない方が良いとの意見に分かれる。
私などはどうしてそのような犯行に至ったを知りたいのですが、事が起こった時から「知る」ことは〈どうでもよい〉雰囲気。
ただ「絶対にやってはいけない犯行」との事で議論は終わっている。

 さて、そんな時に出てくる言葉が「右翼」「左翼」「保守」「革新」。
あるラジオの番組で聞いて〈目から鱗〉の話。これにはびっくりしたと同時にストンと落ちる確信を持ってしまいました。
どの言葉も我が国では意味が不明確。
曖昧模糊(あいまいもこ)としていて、〈元〉を知った上での用い方ではないという事。

 元々「右翼」「左翼」とはフランス革命後、議会で議長席から見て右方に座った保守派の国粋主義・ファシズムなどを指し、
「左翼」は議会で議長席から見て左方の席を占めた急進派・社会主義・共産主義を指す。
「共産主義」に対抗して起こった言葉「ファシズム」。その意味は比較的解りやすい。
全体主義・権威主義・議会政治の否認・一党独裁・自由の極度の抑制・自民族中心主義・暴力・侵略政策を特徴とする思想。
界の分断を起こした言葉です

 さて、「保守」と「革新」もよく使われるものですが、これが最も間違った使われ方をしている、という話がラジオから飛び出したのでした。
本来の「保守」はファシズム的なものでなく、急激な「革新」でなく、緩かに、伝統を残しながらゆっくりと折り合いを見つけ、良いものへと向かわせる思想なんだそうです。
それがいつの間にか意味を取り違えて使われてしまっている。
本来の「保守」の方々はそのことに異議を申し立てている。決してファシズムではないと。
今、右翼に走っている世代はシニア。若者たちではない。と話手は言う。
「シニア右派」は実はネット(YouTubeなど)の動画によってデマや陰謀論に騙されやすい50歳以上の世代、だというのです。

 私は70代。私の世代はあの戦争を踏まえての「民主主義」を教えられた者で、
今世間を騒がせている中傷・ヘイト(憎悪・差別をあおるような言説)・罵詈雑言(ばりぞうごん)をネットに溢れさせてはいない、と思っていたのですが、
実はこの50歳代以上の世代が垂れ流しをしている。
この世代、民主主義を学び取れなかった「鬼っ子」たち。この人たちが意見を述べる手だてを学べず、
未熟な知識、能力故に、それを手軽なネットに求めた結果の表れだと言うのです。
こう主張した人。
古谷経衡(ふるやつねひら)氏が「シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか (中公新書ラクレ)」で訴えています。





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