八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.184


【掲載:2021/12/05(日)】

音楽旅歩き 第184回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

世界を知る、読み解くことは「宗教」を理解すること

 またまた「新型コロナウイルス」、変異株「オミクロン株」が世界的な広がりを見せ始めているようですね。日本にも感染者が出ました。
これからの推移を見るしかないのでしょうが、何か不気味さを感じます。

 さて、今日のテーマはそこから外れて(いや、大きく関係しているのですが)、「宗教」の話を。
我が国の一般の人は古くから「宗教」について深く考えることはなかったように思われます。
しかし、世界的な視野で人々の交流について考えると「宗教」の知識は不可欠だと解ります。
将来的には「宗教離れ」や「宗教消滅」へと流れが変わると想像するのですが、
現代はやはりそれぞれの国、民族が独自の「宗教」を規範として価値観を共有している、それを前提にしなければなりません。
グローバル化が進んでいる現在、国々の関係を構築し、外交を結ぶには「それぞれの宗教」についての理解無くしては成り立たないのは自明です
国の統治の違い、経済との関係、そして人々のライフスタイル(価値観・生活様式)を知ってこそ〈交渉の場〉に臨めるというものです。

 我々日本人は少し前まで「多神教」とか「無宗教」と説明されることがありました。
しかしそうではないですよね。日本人ほど「宗教的」な民族は希(まれ)だと思います。
ちょっと思い出すままに並べると「神道」「仏教」「新宗教」と出てきますね。
そしてこれらの基となっているアニミズム(自然界の諸事物に霊魂・精霊などの存在を認めての信仰)も日本人の生活にしっかり根を張っていて、
とても強く精神に作用していると思われます。(英国の人類学者は「アニミズム」が宗教の起源だとしています)

 「日本教」と呼んでもいいぐらいに我が国の精神の有り様は特異で、異彩を放ちます。
書店へ回ることが以前より減ったとは言え、出かければ立ち寄ります。
店頭に並んでいる本にはほとんど興味あるものは見つけないのですが、今はどのような内容のものが売れているのか、あるいは書店として売ろうとしているか、には興味があります。
最近では「宗教」に関しての本が多く並んでいることに気付きました。
私自身が長くキリスト教に携わってきましたから、一般の方より理解はしているように思います。
若い頃には宗教や哲学に対する向学心も強かったですから、特に自分が関わった宗教は他のものとどのように異なっているのかが気になって、
毎日そういった関連の本と格闘していたことを思い出します。

 「日本語」が「日本人」を作った。一つの言語で生活をしてきた。
そのことで独自の文化を築き上げてきた。
他の国は陸続きを隣国とする環境、また航海による交易(植民地に因ったものもあった)などで早くから多言語に触れてきた歴史があります。
多言語に接するとは他文化を知るということですね。我が国ではそういった歴史が乏しい。ほとんど無かったと言って良い歴史です。
現代こそ他文化を知って役立つことは採り入れるという柔軟さが求められています。
一つの宗教に固執、それは危険です。





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