八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.190


【掲載:2022/4/03(日)】

音楽旅歩き 第190回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

自然界の災害は人類を強くする。しかし防ぐことのできる人間同士の争いは空しい人災

  先日(3月27日[日])、京都において演奏会を開催しました。
まだまだ続く「コロナ禍」。その上、ロシアとウクライナ間での紛争(戦争)。
決して世界は平和とは言えない最中でのコンサートです。
そのプログラムに掲載した私の「演奏にあたって」を転載します。

 『世界は血なまぐさい争いを止めることが出来ないでいます。人類の歴史上絶えることなく続いています。
それが戦争であったり、人間の諍(いさか)いであったり、子どもたちの間でも起こります。
どうして人間って傷つけあってしまうのでしょうか?
生物間は勿論、全ての自然界で起こっている「命の循環」とは残酷な面も確かに有って、その残酷さを見せつけられてしまいます。
しかし、人間が人間の命を絶つことを当然とする思考は絶対に有ってはなりません。
それはこの地球から人類を絶やすことになるからです。
この美しい地球に人類は存在しなくなるのです。人類が人類を滅ぼす!なんという愚行。
それは人類が知恵を培っての進化、発展において決して有ってはならないことです。
奇跡としか言いようのない人類の存在。
マクロ(巨視的)にもミクロ(微視的)としても摩訶不思議、感動の連続です。
宇宙が生みだした何と言う美しさであることか!
演奏する、ということはこの感動をその場に居あわせている皆さんと味わうことだと私は思っています。一番平和的にです。
一期一会の世界。やり直しが効かない、その瞬間を感じ取れる人間の感覚。一人一人の心の動き、瞬間を刻みます。
今回の選曲は「人間の素晴らしさ」をより味わいたいとの思いでした。
イタリアにおいて新しい音楽時代の扉を開いたクラウディオ・モンテヴェルディのマドリガル、当時の人々の「人間賛歌」です。
千原英喜ワールド、散文の世界。そのメルヘンが最初は女声合唱として作曲され、後に混声合唱に編成し直された曲。
この混声版はその類で成功した曲だと私は思います。
それぞれの曲の「おとぎ話」を人間ならではのイメージで彩りたいと思いました。
さて、寺嶋陸也氏の「星への距離」。
氏から頂いた未出版の楽譜から選びました。2017年11月に書かれたこの曲、何と現代と相応することか!
ウクライナで起こっている戦禍、正にそれは人間の愚かさ、残忍性を覗かせて世界を恐怖へと駆り立てています。
軽んじられる生命!
11年前に起こった大惨事(津波・原発)は今以て解決されてはいません。
その理不尽さ、それは今も続いています。
自然の猛威(「新型コロナウィルス」)は人類に課せられた必然的災害とも言えるでしょう。
しかし、殺戮を繰り返す人間の愚かさ、残忍性が現れる戦争は「人間が起こし、回避もできる大災害」です。
地球の歴史上最も危惧されるこの時、開催することができる演奏会に心からの感謝です。
沢山の方々の協力の下での演奏会です。災害の終息を、そして平安を!
それを祈って、「人間って素晴らしい!」と、渾身の棒を振りたいと思います。』





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ