八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.196


【掲載:2022/8/07(日)】

音楽旅歩き 第196回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

音楽を通して問い続けます 今起こっている災難の根本原因とは

  猛暑が続く大阪。そして全国的には異常天候で各地に雨による災害が起こっている。
スマートフォンからは矢継ぎ早に注意勧告や警報が送られてくる。
テレビを観れば、家々が川の氾濫で浸かっている情景や崖などが崩れていく様子が映し出される。
それを呆然としながら眺めてしまう私。
しかし世の中は余り騒がしくないのにも驚く。
淡々と、あるいは人事のように、又は演出された報道のようにその事態を現地の報告として担当者が喋っている。

 いったいこの国はどうなってしまったのだろうかと、呟(つぶや)く私です。
私が覚えている感覚は、ザワザワと軋む胸中であり、災害に遭われているだろう一人一人の未だ見ぬ顔の表情を思う心の痛みです。
生活が暴力的に壊されていく儚(はかな)さ、虚(むな)しさ。
昨今起こっている政界や財界、そして各界で顕わになっている問題とどうしても重なってしまい、「もっと騒ぎましょうよ」と言いたくなる私。
今まで起こったことのない事例や記録破りの雨量が何故起こっているのか、って気になりません?
根本にある原因を知らなければ、そして改善しなければ、事は繰り返し起こってしまう。
いやもっと災難は数多くなり更に大きくなっていくことでしょう。人間って放っておけば良い方向へとは向かいません。
良くするためには人間が積み重ねてきた体験、苦い事や幸せ感から得た「知識」を絶えず後世へと伝え続けなければなりませんね。

 詰まるところ「教育」が大切だ!との事に行き着きます。
若い人と付き合って思うに、大事な「人としての体験」が伝わっていないのでは?確かに事柄としては知っている、しかし「体験とする実体」が伴っていない。
原因と結果を結ぶプロセスが希薄なのではないかと思ってしまいます。
現象を把握する、それも分析的に捉えることができる。一見「賢人」風なのですが実は〈事の根っこ〉とは繋がっていない。それが「怖い」と感じるのですね。
「根っこ」を考え、探り、掘り起こす、その思考が見えない。
ウイルス変異株の猛威。いっこうに収まる気配がありませんね。

 日本で最も酷い場所が大阪。私が住んでいる地域です。
音楽活動を通して日々感じるのは、日本人って我慢強く、温和しく、従順であるということ。
私もその中の一人ということになるのですが、既に多くの人はこういった災難が襲ってきたときには「自助の精神で臨む」と悟っているかのようです。
これは大いに「公助」に頼って良いはずなのに・・・・・・。
音楽で生きる喜びを、と願っている方々に演奏を提供する、それが私と仲間たちの活動の核心です。
休むことなく演奏活動が続けられていることに感謝なのですが、この災難に満ちている中で行われていることは既に「奇蹟」なのではないかとも思えます。
ということは、この災難こそが「教え」ではないか。
そこに起こっている全てのことについて語り合い、情報を交換し、皆がより良く生活できるよう前進する。
「伝えたいこと」が山ほどある。音楽活動を通して問い続けます。





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