八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.197


【掲載:2022/9/04(日)】

音楽旅歩き 第197回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

「教育」を皆で考えたいですね 未来の子どもたちのために

  「記録を残す」人たちに敬意を表します。それが文字であっても、映像であっても。
記録を公開することは様々な方々に気を配らなくてはなりません。
自分史的なものなどは別に気兼ねなど必要なく、好きなように書けば良いでしょう。
しかし、その自分史を公開、あるいは出版することになればそう好き勝手に書いて良いものにはなりません。
登場する人のプライバシーを尊重しなければなりませんし、出来事が事実であるかどうかの検証も必要となります。
「記録」、これからは「ドキュメンタリー」と書きますが、その「ドキュメンタリー」を公開した人たちに心からの敬意と尊敬の念を示したいですね。

 ラジオで知った今評判だという「ドキュメンタリー映画」、その題名は「教育と愛国」というものでした。
ある放送局のプロデューサー(斉加尚代)が20年以上にわたって教育現場を取材し続けた記録映画です。
興味が湧いたので時間を割き、小さな映画館での上映を観てきました。

 観る前に頂いた宣伝記事には「いま、政治と教育の距離がどんどん近くなっている。
軍国主義へと流れた戦前の反省から、戦後の教育は政治と常に一線を画してきたが、昨今この流れは大きく変わりつつある。
2006年に第一次安倍政権下で教育基本法が改正され、「愛国心」が戦後初めて盛り込まれた。
以降「教育改革」「教育再生」の名のもとに、教科書検定制度が目に見えない力を増していく。」と綴られています。益々興味深い!

 映画を見終わって感じたことは、実に丁寧な取材と編集。
どちらかと言えば、内容は政治と教育の距離を近くしようとする人々の迫力ある意見が多いことと、
その人たちの力強い言葉、その記録されたシーンは実に印象深かったです。この「ドキュメンタリー」の配給に敬意を表します。
この映画は多くの人々の口コミで広がりつつあり、全国で上映されるらしい(ただし小さな映画館での上映)。

 誤解を招くかもしれませんが、音楽活動って「教育」の一環だと思っています。
「教育的」か「教育的でないか」は重要でなく、音楽が「人づくり」そのものだと思っている私です。
クラシックが好みの人、ロックこそが人間の魂の叫びだと感じる人。
どのジャンルの音楽であれ人の個性が音楽を生み、音楽がまたそれぞれのジャンルの中で個性を作っていく。

 「教育」の定義とは何でしょう?
1)教え育てること。
2)知識、技術などを教え授けること。
3)人を導いて善良な人間とすること。
4)人間に内在する素質、能力を発展させ、これを助長する作用。
5)人間を望ましい姿に変化させ、価値を実現させる活動。
と解説するものがあります。
まぁ、一言で表せば「教育とは、人の持つ諸能力を引き出すこと」ということだと私は思うのですが、もしこれを定義とするならば、「音楽は教育」と言い切っても良いくらいです。
教育は人づくり。
ならばその大切さは自明の理です。
「教育」をどうするか?皆で考え続けたいですね。
大人の都合でなく、未来の子どもたちのために。





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